幸せな離婚

「お義母さん、すみません……。水ようかんが売り切れだったので、代わりにくず餅を買ってきました」
汗を滴らせながら家に戻りリビングにいる義母に声をかける。
すると、義母は露骨に顔をしかめた。
「売り切れ?やだわぁ、それならいらなかったのに」
「一応確認の為にお義母さんにお電話したんですけど出られなかったので……」
袋を持つ手に力がこもる。
「ああ、今韓ドラ見ててそれどころじゃなかったのよ。とにかく、くず餅はいらないから。健太郎はくず餅嫌いだし、あなたが一人で食べたら?」
「私が、ですか?」
「なにか不満でもあるの?」
「いえ」
「ホントあなたって使えない嫁ね」
義母は吐き捨てるように言うと、私が邪魔だと言わんばかりにテレビの音量を上げた。
あなたがキンキンに冷えた部屋の中で寝転んで韓ドラを見ているとき、私は熱中症になって倒れかけたというのに。
節電節電とうるさいぐらいに口酸っぱく言うくせに自分は設定温度を20度にしているの?
私が二階のクーラーをつけるだけで文句を言うくせに。
どうして。どうして。どうして。
心の中で悪態を吐きながらリビングを飛び出し二階の階段を駆け上がっていく。
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