幸せな離婚
「どうかされました?」
顔を覗き込まれてハッとする。
「え?」
「何か考え事をしているように見えたので」
「ああ、すみません!大丈夫です」
「それならよかった。こちらへどうぞ」
瀬戸さんに促されて歩き出す。
木造平屋建ての古い日本家屋。群馬の田舎町にあった母方の祖父の家もこういう造りをしていた。
長い廊下を歩き茶の間へ案内された私は室内のある一点に目が留まった。
「す、すごい……。これ全部本ですか?」
「そうです」
部屋の一面が全て本棚になっている。まるで小さな図書館のようだ。
「本、お好きですか?」
「好きです!子供のころから本を読んでいる時間だけは心が安らいだので。今でも時間があると本屋さんで好きな作家さんの新刊をチェックに行きます」
「そうなんですね。ちなみに本棚はこの部屋だけじゃありませんよ」
「他にもあるんですか!?」
気持ちが高揚して声が大きくなる。こんな風に興奮したのはいつぶりだろう。
瀬戸さんに案内されて入った10畳ほどの部屋もまた一面本棚になっていた。
「ここ、瀬戸さんの部屋ですか?」
「はい。さっきの茶の間は祖父の好きな本が並んでいて、この部屋は俺の好きな本が置いてあります」
「そうなんですね……」
本棚は綺麗に整理整頓され、作者ごとに分類されて並べられている。
その中に私の好きな作家の本も並んでいた。
「梅木先生の本、お好きなんですか?私、先生の本大好きなんです!」
「はい。梅木先生の本は心理描写が巧みなので好きです。主人公のキャラクターも魅力的でつい応援したくなるんです」
「わ、わかります!みんな暗い過去を持っているのに前向きだし、励まされますよね!」
「そうなんです。先生の最新作は読まれましたか?」
「読みました!読み終わったら私涙が止まらなくて……」
「俺も泣きました」
「やっぱり!よかったですよね!!」
「はい」
「嬉しい!こうやって本の話を一緒にできる人がいて」
そう言うと、瀬戸さんは「生井さんは素直な方ですね」とふわりと笑った。
健太郎は昔から本を読まないし、私とは違いアウトドア派で休みがあるとどこかへ出かけたいというタイプだ。
だから、本の話なんてしても「その話つまんない」で一蹴され終わってしまう。
こうやって共通の趣味のある人と言葉を交わせるなんて思ってもみなかった。
顔を覗き込まれてハッとする。
「え?」
「何か考え事をしているように見えたので」
「ああ、すみません!大丈夫です」
「それならよかった。こちらへどうぞ」
瀬戸さんに促されて歩き出す。
木造平屋建ての古い日本家屋。群馬の田舎町にあった母方の祖父の家もこういう造りをしていた。
長い廊下を歩き茶の間へ案内された私は室内のある一点に目が留まった。
「す、すごい……。これ全部本ですか?」
「そうです」
部屋の一面が全て本棚になっている。まるで小さな図書館のようだ。
「本、お好きですか?」
「好きです!子供のころから本を読んでいる時間だけは心が安らいだので。今でも時間があると本屋さんで好きな作家さんの新刊をチェックに行きます」
「そうなんですね。ちなみに本棚はこの部屋だけじゃありませんよ」
「他にもあるんですか!?」
気持ちが高揚して声が大きくなる。こんな風に興奮したのはいつぶりだろう。
瀬戸さんに案内されて入った10畳ほどの部屋もまた一面本棚になっていた。
「ここ、瀬戸さんの部屋ですか?」
「はい。さっきの茶の間は祖父の好きな本が並んでいて、この部屋は俺の好きな本が置いてあります」
「そうなんですね……」
本棚は綺麗に整理整頓され、作者ごとに分類されて並べられている。
その中に私の好きな作家の本も並んでいた。
「梅木先生の本、お好きなんですか?私、先生の本大好きなんです!」
「はい。梅木先生の本は心理描写が巧みなので好きです。主人公のキャラクターも魅力的でつい応援したくなるんです」
「わ、わかります!みんな暗い過去を持っているのに前向きだし、励まされますよね!」
「そうなんです。先生の最新作は読まれましたか?」
「読みました!読み終わったら私涙が止まらなくて……」
「俺も泣きました」
「やっぱり!よかったですよね!!」
「はい」
「嬉しい!こうやって本の話を一緒にできる人がいて」
そう言うと、瀬戸さんは「生井さんは素直な方ですね」とふわりと笑った。
健太郎は昔から本を読まないし、私とは違いアウトドア派で休みがあるとどこかへ出かけたいというタイプだ。
だから、本の話なんてしても「その話つまんない」で一蹴され終わってしまう。
こうやって共通の趣味のある人と言葉を交わせるなんて思ってもみなかった。