幸せな離婚

幼いころから厳格な両親の元、厳しく育てられた。
父は警察官、母は中学校の教師だった。
小学生の時は学校のあとピアノ、そろばん、英会話、バレエ、スイミングなどの習い事を強制され、友達と遊ぶことを禁止された。
両親の期待に応える為に狂ったように勉強をして、学年トップクラスの成績を維持して中高、そして一流大学へと進んだ。
就職活動を行っているさなか、両親が不慮の事故でいっぺんに亡くなった。
私はずっと両親の操り人形のように生きてきた。
何かをしたいとか何かをやりたいとかそういうことよりも、どうやったら両親を喜ばせられるかを優先していたのだ。
そんな両親が亡くなり、私を操る人はいなくなった。
突然プツリと糸の切れた操り人形の私はどうやって踊ったらいいのか分からなくなった。
就職活動はうまくいかずどこからも内定がもらえない。
お前はいらない人間だと烙印を押されたみたいな気持ちだった。
結局、藁をもすがる思いで面接に臨んだ大学病院で事務の採用が決まり、医療事務の道へ進んだ。
数年も経つと、同期の事務員が何人も寿退社していった。
『優花ちゃんも早く良い人見つけて結婚しなよ』
『そろそろ結婚適齢期でしょ？婚活終わったら今度は妊活だよ！』
みんな口々に言った。
女の幸せはスペックの良い旦那と結婚して子供をもうけて暮らすこと。
結婚して子供を産んで育てればようやく一人前だと言わんばかりに妊活に取り組む友人たち。
だから、婚活パーティで健太郎と出会ったとき私はようやくみんなが口をそろえて言う幸せを手に入れたはずだった。
それなのに……。