幸せな離婚
「……夕飯できました」
どんなに腹を立てても、私が主婦業を放棄することなど許されるわけがない。
食卓に夕食の焼き魚と煮物などを並べながらリビングでスマホを弄ってくつろぐ健太郎と義母に声をかける。
二人が食卓につく。私だけが「いただきます」と手を合わせる中、二人はさっさと料理に箸をつける。
健太郎がくちゃくちゃと音をたてて料理を食べることも、肘をついてスマホを弄りながら食べるところも結婚するまで分からなかった。
健太郎は釣り上げた魚に餌を上げないタイプの人間だったようだ。
「この煮物味薄くね?」
「確かにね。優花さんの料理って基本塩分控えめなのよ」
義母がボトルのしょうゆを健太郎に手渡す。
ドバドバと煮物にかけるのなんていつものこと。
私は黙って料理を口に運ぶ。
料理を作っても健太郎も義母も『美味しい』などと言ってはくれない。
いつも粗ばかり探してチクチクと私に嫌味を言うのだ。
胃の奥が引きつれたように痛み、私は箸を置いた。
「すみません、少し気分が悪いので二階で休みます。片付けは後でやりますので」
「あらそう。じゃ、流しに置いておくわ」
立ち上がった私を見ようともせず、健太郎はスマホに夢中だ。
苛立つ気持ちを押さえて二階に向かい、ベッドに横になる。
帰ってきてから健太郎がつけたのか、寝室は寒いぐらいに冷えていた。
「このままでいいのかな……」
キリキリと痛む胃をおさえながらため息を吐く。
結婚して同居を始めてから、体重は5キロも減った。
ストレスのせいか、こうやって胃が痛くなって寝込むことも一度や二度ではない。
もちろん、昼間フクを探して駆け回った疲れもあるだろう。
だけどあの時間は私にとって何の苦でもなかった。
どんなに腹を立てても、私が主婦業を放棄することなど許されるわけがない。
食卓に夕食の焼き魚と煮物などを並べながらリビングでスマホを弄ってくつろぐ健太郎と義母に声をかける。
二人が食卓につく。私だけが「いただきます」と手を合わせる中、二人はさっさと料理に箸をつける。
健太郎がくちゃくちゃと音をたてて料理を食べることも、肘をついてスマホを弄りながら食べるところも結婚するまで分からなかった。
健太郎は釣り上げた魚に餌を上げないタイプの人間だったようだ。
「この煮物味薄くね?」
「確かにね。優花さんの料理って基本塩分控えめなのよ」
義母がボトルのしょうゆを健太郎に手渡す。
ドバドバと煮物にかけるのなんていつものこと。
私は黙って料理を口に運ぶ。
料理を作っても健太郎も義母も『美味しい』などと言ってはくれない。
いつも粗ばかり探してチクチクと私に嫌味を言うのだ。
胃の奥が引きつれたように痛み、私は箸を置いた。
「すみません、少し気分が悪いので二階で休みます。片付けは後でやりますので」
「あらそう。じゃ、流しに置いておくわ」
立ち上がった私を見ようともせず、健太郎はスマホに夢中だ。
苛立つ気持ちを押さえて二階に向かい、ベッドに横になる。
帰ってきてから健太郎がつけたのか、寝室は寒いぐらいに冷えていた。
「このままでいいのかな……」
キリキリと痛む胃をおさえながらため息を吐く。
結婚して同居を始めてから、体重は5キロも減った。
ストレスのせいか、こうやって胃が痛くなって寝込むことも一度や二度ではない。
もちろん、昼間フクを探して駆け回った疲れもあるだろう。
だけどあの時間は私にとって何の苦でもなかった。