幸せな離婚
「よかった、優花が笑ってくれて」
「え?」
「正直、なんか疲れてるしやつれてるし心配になっちゃったよ。しかも、旦那が浮気してるかもなんて言い出すから」
「ごめんね、重い話して」
「いいのいいの、私も短かったけど結婚生活は味わったわけだし愚痴ぐらい聞けるって」
「薫は……今、幸せなんだよね?」
「もちろん!」
「私ね……、離婚っていう言葉が昨日初めて頭に浮かんだの。結婚した以上、健太郎とずっと一緒にいるべきだって分かってる。でも……」
私の気持ちを察しとったように薫が優しい眼差しで私を見つめた。
「結局さ、パートナーと同じ方向向いてケンカしたりもめたりしながらも気持ちに折り合いつけて歩いていけるならそれでいいと思う。でも、無理に相手にあわせようとしてるとしたら時間の無駄だよ。相手はそんなこと分かってくれない。分かってくれるような相手ならもっと寄り添う優しさ持ってるはずだもん」
「時間の無駄……?」
「相手を変えることはできないもん。だったら、自分が変わるしかないと思わない?」
薫の言葉を私は食い入るように聞いた。
「もちろん、それは旦那に意見を合わせるとか、旦那の言うことを聞くとかそういうことじゃないよ。自分自身の為に変わるってこと」
「私が……変わる?」
「優花って昔から人に流されるところあるじゃん?自分本位の逆で他人本位。いつも人のことばっかり考えて自分の気持ちは二の次って感じ」
「そうかな?」
「厳しい両親に育てられたせいだと思うけど、私はもっと貪欲に生きてもいいと思うよ?欲しいものは欲しいって言っていいし、やりたいことはやっていいの。だって、うちらもういい大人だし。犯罪以外のことでやりたいことがあるならなんでもやるべきでしょ」
「そっか。そうだよね……」
薫の考えにひどく共感を覚えた。
そうだよ。私はもう大人だ。責任は伴うにしろ、やりたいことをやれる自由がある。
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