【完結】好きな人と同期に挟まれました〜叶わない恋だとしても〜
「あ、そろそろ行かないと!」
コーヒーを飲みながらテレビを見ていたら、もう出かけなければならない時間になっていた。
「あ、いけない!傘!」
着替えを済ませ玄関口で傘を取り、急いで家を出る。
「晴れてるのに、雨降るのか……」
帰り道やだな……。なんて思っていると、向かいの道から聖が歩いてくる姿が見える。
「おう、花霞!」
「聖、おはよう」
「えらいじゃん、ちゃんと傘持ってきたのか」
聖は私の傘を見て、そう言ってくる。
「うん」
私と聖は、一緒のタイミングでバスに乗り込む。
「花霞、座れば?」
空いている席を見つけると、聖は私に席を譲ってくれる。
「……いいの?」
「ああ、ほら座れよ」
「ありがとう」
聖は優しいな、本当に……。
「救命、昨日大変だったんだって?」
聖は私が飽きないように話かけてくれる。
「え?」
「トンネル事故の患者、大変だったんだろ?」
「あ、ああ……うん」
昨日のトンネル事故の患者たち、あれは大変だった。重傷者が多くて、救命だけでは手に負えなかった。
「それはお疲れ」
処置室がいっぱいになってしまって、廊下まで患者さんが溢れていた。