【完結】好きな人と同期に挟まれました〜叶わない恋だとしても〜


 私はバスが停留所に到着すると、逃げるようにバスから降りた。
 傘を広げて背を向けて歩き出すと、私は自分が泣いていることに気付いたーーー。 

「えっ……なんでっ……」

 なんで私、泣いてるの……? どうして……。

「っ……ふぅっ……」

 私はその場に立ち止まり、少し乱暴に涙を拭う。

「……っ、泣いちゃ、ダメッ」

 泣いたら私、そのくらい先生が好きだってことを自覚しているってことになる。
 違うと思いたいのに、私の心は先生のことばかりでいっぱいになって、意に反する行動を取ってしまう。

「……あの、大丈夫ですか?」
  
 そんな時、後ろから誰かに声をかけられる。

「っ……え?」

 涙を拭って、後ろを振り返る。

「花霞……?」

「……ひ、じり?」
 
 そこにいたのは、私を見つめる聖だった。

「……どうした、花霞?」

「な、何でもないっ……。雨が、目に入っただけよ」

 聖にはそんな言葉が、ウソだと分かってるはずだ。 だからこそ聖は、私に「……ウソ、つくのヘタだな」と私を見る。

「……本当に、何でもないから」

「花霞、俺には……ウソは付くなよ」

 その言葉の意味を、私はまだ理解出来ていない。
< 55 / 62 >

この作品をシェア

pagetop