色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅰ
 安っぽい服を着て。
 物静かに本を読んでいたテイリー。

 見た目で判断してゴメン。
 お風呂に入って。
 着替えて。
 テイリーと一緒に終始無言の夕食を終えて。
「少し、話しましょう」とテイリーに言われて庭園をゆっくりと散歩することになった。

 テイリーは白いYシャツに黒のスキニーパンツを履いている。
 私と言えば、用意してもらった大きめの紺色のワンピースを着ていた。

 ライトアップされた庭園は美しくて。
 甘い花の匂いがした。
貴女(あなた)をこれから、ティルレット王国で暮らす手筈を整えます」
「…え?」
 じゃり。
 立ち止まると足元で砂の音がする。
 テイリーの言葉に固まると。
 テイリーは鋭く、こっちを見る。
「貴女、昔からこぼしてたじゃないですか。こんな国なんて嫌だって」
 テイリーは近くで咲いている花を眺めた。
「ここにいたら、貴女はずっと傷つくだろうし、僕はもう貴女を助けてやれません」
「……急に言われても」
「もう、決まったことなんで」
 ニヤッとテイリーは悪魔のように笑った。
 王族のテイリーのいう事は絶対条件。

 ああ、こういう身分の差があるところが嫌だから逃げ出したいって思ったんだっけか…
 黙って考えていたが、
 何で、テイリーがここまで助けてくれるのかわからない。
「私は、あなたに何もしてあげられない…」
 呟くように言うと。
 テイリーは、ゆっくりとこっちに近づいてきた。

「思い出をください」

 テイリーの言葉に、ぽかんとしてしまったが。
 意味がわかると、うわぁぁぁと恥ずかしくなる。
「私でいいの?」
「それは、こっちのセリフです」
 ずっと不機嫌そうだったテイリーが安心したように柔らかい笑顔を見せる。
 こんな顔もするんだ…と驚いてしまう。
 近づいてきたテイリーは、そっと私の手を掴んだ。

「ずっと、貴女のことが好きだった」
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