色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅰ
2,デート

1,久しぶりのデート

 こんなに緊張したのは、いつ以来だろう?
 ヒューゴとの初デート以来だろうか。

 ずっと忘れていた緊張感。
 何度も鏡を見て、これでいいよね? と確認する。
 まさかあの小学生だったテイリーとデートする日が来るなんて想像できない。

 どうやら、私は鈍い女らしい。
 テイリーに「好きだ」と言われて、初めてテイリーの気持ちに気づいた。
 美人の私は、誰構わず愛される自信はあったけど。
 テイリーに恋愛感情を持たれているとは、夢にも思わなかった。

 テイリーとは、礼拝堂で少しずつお互いのことを話すようになったけど。
 小学生のクセに、テイリーには常に彼女がいた。
 彼女の写真を見せてもらうのだが、いつも同い年の子と付き合っていて。
 フワフワとした服装をして、のっぺり平凡顔と付き合っていた記憶がある。
「年上とかありえねえー。おばさんじゃん」と面と向かって私に言ってくる口の悪さ。
 それを聞いて私は何故か安心してしまった。

 テイリーの顔面偏差値はフツーだけれど。常に途切れることなく半年~一年ほどで彼女が変わっていた記憶がある。
 そんな彼が、私のことを好きだと言ってくるのはビックリするに決まっている…

 悩んだ末に選び抜いた服に流行のメイク。
 屋敷を出て、ベンツに乗って移動。(流石、王族)
 いつもペラペラの安い服を着ているテイリーだけれど。
 今日は、どういうわけかスーツを着ている。
「何で、スーツ?」
「…わかんないんですよ。服装が」
 困ったような顔をするテイリーを見て、思わず笑ってしまう。
 グレイのワイシャツにブラックスーツ。
 襟を彩っているラペルピンは青い薔薇だ。
 王家の紋章にある薔薇をこっそりと表現しているように見える。

「テイリーのスーツ姿、新鮮だわ」
「…制服みたいなもんでしょ。コレ」
 真顔で答えるテイリー。
 車はすいすいと進んで行く。

 テイリーと喋っているうちに、あっというまに目的地に到着する。
「美術館?」
 今日のデートプランはすべてテイリーのお任せなのだが。
 いきなり美術館というのは予想外だ。
「ゆっくり見ましょう」
 既にチケットを買っているのか、テイリーの手には入場券が2枚ある。
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