色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅰ
 ヒューゴとのデートといえば、映画かカラオケ。ファミレスでご飯。
 ヒューゴの部屋でイチャイチャするということが多かった。

 デート中は、ヒューゴのことが頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返し。
 時折、アミラの顔が浮かんできたので、イライラする。

 なるべくヒューゴとアミラの話題は避けようと思ったけど。
「顔に出すぎ。別にいいですよ。あの人達の話をしたって俺は気にしませんよ」
 と、テイリーにあっさりと心の内を言い当てられたので、話すことにした。

 美術館でゆっくりと絵画を鑑賞した後は、美術館に併設してあるレストランで昼食を食べる。
「テイリーってさ、王族で言うと…どのポジションなの?」
 トロトロのオムライスを口に入れながら、テイリーに質問すると。
 テイリーは「ああ」と声を漏らした。

 レストランは平日のせいか人が少ない。
 ゆっくりとした時間が流れているように感じる。
 全面ガラス張りの窓から見える庭園の美しさは、春の訪れを感じさせた。
「俺の父親が国王の弟です」
「…ん?」
 聞き間違いではないかと思い、もう一度聞き直す。
「現国王の弟が俺の父です」
「…嘘でしょ」
「嘘ついても仕方ないでしょう」
 スプーンを置いたテイリーはこっちを見た。
 私は、まじまじとテイリーの顔を眺める。
 王族とはいっても、国王から見て遠い親戚程度にしか思っていなかった。
 いや、そもそも国王の甥っ子がここらへんでウロウロしているのはおかしくないか?

「父は王室を離脱しているので、平民とは変わらない生活をしているんです」
「へ!?」
 オムライスが変なところに入ってしまったのか、私はゴホゴホと咳き込んで水を飲む。
「え…と、え、じゃあテイリーは王族じゃないのでは…?」
「いや。俺は王族で、王位継承第3位なんで」
「…どういうこと」
 大声を出しそうになるのを必死にこらえる。
 食べ終えたテイリーは水を飲むと。
 じっとこっちを見つめる。
「現国王には子供が2人いますが、2人とも王位継承を拒否しているんです」
「…そんな」
 政治についてなんて興味ないし、王族についてなんてもっと興味はなかったけど。
 目の前に座っている男は何者なのだろうと考えてしまう。
 何故、こんなにも近くにいるのに何も知らなかったのだろう。
「生まれたときから、俺の人生は決まってるんです」
 低い声でテイリーが言った。
 皮肉を込めて言うのはいつものテイリーなのだが、
 内容が重すぎて、どう返事をすればいいのかわからなかった。
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