色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅰ
ショッピングの後、軽くお茶をして。
車で移動する。
ショッピングで疲れてしまったのか、車の中でうとうとしていると。
「着きましたよ」
とテイリーに声をかけられる。
外に出ると、肌寒くて。
ぶるっと身震いしながら、テイリーの後ろをついて行く。
周りにビルはなくて、大きな公園なのかなあと思っていると、
「セシル先輩。綺麗でしょう?」
一面、ピンク色の花畑に絶句した。
右を見ても左を見ても、一面チューリップの花で埋め尽くされている。
ピンクと赤色の花畑。
テイリーはにっと笑うと。
ゆっくりと歩き出した。
チューリップを眺めているのは私とテイリーだけで。
観光客と思われる人影はなかった。
「そこにベンチがあるので、座りましょう」
路の途中にあるベンチに座ってチューリップを眺める。
夕方のせいか、風が強くなってきた。
ふわりと自分のスカートがめくれる。
「凄いね、この花畑。きれい・・・」
「でしょう? 貴女が好きそうなところだと思って。連れてきて良かった」
テイリーが優し気に笑った。
その笑顔を見ていたら、急に悲しい気持ちになってしまう。
私は、テイリーのことなんにも知らなかったけど。
出会った時から、コイツは私の味方だった。
「俺、別に親が嫌いであの礼拝堂に通ってたわけじゃないんですよ」
急に、テイリーが話し出す。
スーツ姿のテイリーとワンピース姿の私。
周りは花畑っていう異質な光景。
「親のこと面倒臭いと思ってはいるけど、一人っ子だし離れることは出来ないと思うんです」
「?」
急に何を言っているのだろうと思ったが、黙って話を聴くことにした。
礼拝堂で出会った頃、どうしてこの礼拝堂に来るのかをテイリーに質問されたので、
「家にいたくないから」と私は答えた。
テイリーは「そうですか、同じですね」と静かに言った。
古びた礼拝堂で、私はひたすらピアノを弾き続け、
テイリーは黙々と読書をしていた。
疲れたら休んで、お喋りをして。
だらだらと過ごしていたあの時間が懐かしい。
「叔父は偉大な人だけど、誰よりも尊敬するし好きな人だと思ってます」
「…うん」
「それでも、俺は将来王位を継ぐかもしれない…『かもしれない』という理由で毎日スパルタ教育を受けてきました。息が詰まるような毎日だった」
「うん」
「逃げ出した先に貴女がいた。貴女は楽しそうにピアノを弾いていた」
「そうなんだ…」
テイリーを見ると、至近距離でこっちを見ていたので驚く。
「知ってましたか? あの礼拝堂は貴女の家のものではないんですよ」
「へ?」
顔を近づけたかと思えば、テイリーは離れる。
冷たい風が吹いて日が沈みかけている。
数え切れないほどの花が風で傾いて揺れている。
「あの土地は国のものになったので、本当は貴女は勝手に礼拝堂に入れないはずなんですよ」
「えっ。そんな馬鹿な。私はちゃんと先生から許可とったし」
あの礼拝堂でピアノを教えてくれていた先生に「使っていい」と言われたから使っていたのに…
「まあ、もう。あの礼拝堂も取り壊す予定だったから勝手に使っていいと言っちゃったんじゃないですか」
「…そんなテキトーすぎるわ」
思わずため息をついたと同時に。
我が物顔であの礼拝堂を好き勝手に使っていた自分を恥じる。
「え、じゃあ。私、テイリーに凄いことを・・・」
「ま、過ぎたことですから」
ニコニコ笑うテイリーに私は「ぎゃー」と声を漏らした。
『一応、忠告しておくけど。この礼拝堂、私が所有しているんだから。私の言う事は聴いてよね!』
13歳の私・・・
バカバカバカ~
穴があったら入りたい。
王族の少年になんてこと言ってるんだ・・・
車で移動する。
ショッピングで疲れてしまったのか、車の中でうとうとしていると。
「着きましたよ」
とテイリーに声をかけられる。
外に出ると、肌寒くて。
ぶるっと身震いしながら、テイリーの後ろをついて行く。
周りにビルはなくて、大きな公園なのかなあと思っていると、
「セシル先輩。綺麗でしょう?」
一面、ピンク色の花畑に絶句した。
右を見ても左を見ても、一面チューリップの花で埋め尽くされている。
ピンクと赤色の花畑。
テイリーはにっと笑うと。
ゆっくりと歩き出した。
チューリップを眺めているのは私とテイリーだけで。
観光客と思われる人影はなかった。
「そこにベンチがあるので、座りましょう」
路の途中にあるベンチに座ってチューリップを眺める。
夕方のせいか、風が強くなってきた。
ふわりと自分のスカートがめくれる。
「凄いね、この花畑。きれい・・・」
「でしょう? 貴女が好きそうなところだと思って。連れてきて良かった」
テイリーが優し気に笑った。
その笑顔を見ていたら、急に悲しい気持ちになってしまう。
私は、テイリーのことなんにも知らなかったけど。
出会った時から、コイツは私の味方だった。
「俺、別に親が嫌いであの礼拝堂に通ってたわけじゃないんですよ」
急に、テイリーが話し出す。
スーツ姿のテイリーとワンピース姿の私。
周りは花畑っていう異質な光景。
「親のこと面倒臭いと思ってはいるけど、一人っ子だし離れることは出来ないと思うんです」
「?」
急に何を言っているのだろうと思ったが、黙って話を聴くことにした。
礼拝堂で出会った頃、どうしてこの礼拝堂に来るのかをテイリーに質問されたので、
「家にいたくないから」と私は答えた。
テイリーは「そうですか、同じですね」と静かに言った。
古びた礼拝堂で、私はひたすらピアノを弾き続け、
テイリーは黙々と読書をしていた。
疲れたら休んで、お喋りをして。
だらだらと過ごしていたあの時間が懐かしい。
「叔父は偉大な人だけど、誰よりも尊敬するし好きな人だと思ってます」
「…うん」
「それでも、俺は将来王位を継ぐかもしれない…『かもしれない』という理由で毎日スパルタ教育を受けてきました。息が詰まるような毎日だった」
「うん」
「逃げ出した先に貴女がいた。貴女は楽しそうにピアノを弾いていた」
「そうなんだ…」
テイリーを見ると、至近距離でこっちを見ていたので驚く。
「知ってましたか? あの礼拝堂は貴女の家のものではないんですよ」
「へ?」
顔を近づけたかと思えば、テイリーは離れる。
冷たい風が吹いて日が沈みかけている。
数え切れないほどの花が風で傾いて揺れている。
「あの土地は国のものになったので、本当は貴女は勝手に礼拝堂に入れないはずなんですよ」
「えっ。そんな馬鹿な。私はちゃんと先生から許可とったし」
あの礼拝堂でピアノを教えてくれていた先生に「使っていい」と言われたから使っていたのに…
「まあ、もう。あの礼拝堂も取り壊す予定だったから勝手に使っていいと言っちゃったんじゃないですか」
「…そんなテキトーすぎるわ」
思わずため息をついたと同時に。
我が物顔であの礼拝堂を好き勝手に使っていた自分を恥じる。
「え、じゃあ。私、テイリーに凄いことを・・・」
「ま、過ぎたことですから」
ニコニコ笑うテイリーに私は「ぎゃー」と声を漏らした。
『一応、忠告しておくけど。この礼拝堂、私が所有しているんだから。私の言う事は聴いてよね!』
13歳の私・・・
バカバカバカ~
穴があったら入りたい。
王族の少年になんてこと言ってるんだ・・・