色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅰ
 服も下着も脱がされて裸になると、テイリーはじっとこっちを眺めてくる。
「綺麗だ」
「当たり前でしょう」
 ふんっと鼻で笑うと、テイリーはそっとキスをしてくれる。
 テイリーの動きを見ていると、「あれ?」とあることに気づいた。

「なんで、震えてるの?」
 テイリーの手が、身体がガタガタと震えている。
「好きな人が目の前にいるから」
 緊張していたということか。
 それにしても、震えているし動きがとてもギコちないというか…
「慣れてるんじゃないの?」
「…初めてだよ」
 衝撃的な一言に私は固まった。
「嘘でしょ…。今まで何人もの彼女がいたくせに」
「俺のこと、どんなイメージで見ていたわけ?」
 ぎゅっと抱きしめてきたテイリーは震えていて、心臓のバクバクが伝わってきて。
 なんだか、こっちも緊張してきた。

 プレイボーイかと思ってた。
 常に彼女がいて、皮肉を込めてクラスメイトの女子を「ブスばっか」と連呼していた男が、初めてとか。
「ずっと、あの男が憎かった」
「…ヒューゴのこと?」
 耳元でテイリーが言う。
貴女(あなた)はこんなにもイイ女なのに、貴女を泣かせて苦しめて。憎くてどうしようもなかった」
「…その割に仲が良かったよね?」
「もういいんです」
 ニヤッと笑うとテイリーの特徴である八重歯が見える。
 何度もキスをされる。
 身体を触られる。

 脳裏によぎるのは、いつだって古びたあの礼拝堂だ。
 私たちは、そこで時間を潰しながら孤独に耐えてきた。
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