色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅰ
 ゲームをするだけじゃなく、ヒューゴとアミラはバーチャルワールドを2人で一つずつ作っていくという…聴いているだけで頭が痛くなる。
 宿舎で考えているのかな…と2人の姿を想像するだけで、頭がグツグツと煮えそうになる。

 いくら、心優しいヒューゴといえど、面倒見すぎじゃない?
 あの女が現れてからヒューゴは私との時間を作らなくなった。

 …あの女さえ居なければ。



「犯罪者? どういう意味です? 私は悪いことなど一切していません」



 ぶるぶると震える手を拳にして。
 ヒューゴを見た。
 絶対に泣くものかと思った。
 ヒューゴの腕をからめて、汚い者を見るかのようにあの女が立っている。
 ああ、気持ち悪い。

 この一年の出来事を走馬灯のように思い出して。
 やっと、口に出た言葉。
 何が、犯罪者だ。
 犯罪者はこの女だろうが。

 私がアミラを睨みつけると。
 アミラは「きゃっ」と小さく悲鳴を上げた。
「貴様は彼女を傷つけ、冒涜し、彼女が学校に居づらいように仕向けた」
「…そんなの嘘です」
 さっきから、ヒューゴが何かを言っているが。
 何も頭に入ってこない。

 犯罪者?
 何を根拠にそんなことを言うのか。
 あの女の悪口を言っただけで、どうして犯罪になるのだろうか。
「最近、婚約者が他の女の子と仲良くしているのを見て、少しだけ嫉妬してしまいます」と呟いただけだ。
 アミラの身体を傷つけたことなんてありませんけど?
 被害妄想もいいところだ。

 ヒューゴはまだ何か言っている。
 ヒューゴの隣ではアミラが脅えてこっちを見ている。
 平民がヒラヒラしたドレス着たって似合わないんだっつーの。
 その不細工な顔でヒューゴの隣に立つな、引っ付くな。

 ああ、
 今すぐ立ち上がって。
 あの女の首を絞めてやろうか。
 それとも、ビンタ10発くらい喰らわせてやろうか。

 何で、こんなことになった?
 私達、ちゃんと愛し合ってたじゃないか。

 立ち上がろうにも。
 恥ずかしさと悔しさで立つことが出来ない。
 せっかくの卒業パーティー。
 このまま、どうなってしまうのだろうかと考えたとき。
 ヒューゴのおじいさんの顔が浮かんだ。
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