色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅰ
 ヒューゴのおじいさんは元政治家だ。
 警察に顔が利くのだ。
 たとえ、冤罪だとしても可愛い孫の学校生活を妨害しただの何だの言って。
 …私は確実に捕まる可能性がある。

 ゆっくりと、体育館を見渡す。
 卒業生がパートナーを連れて、着飾って。
 何事かとこっちを眺めている。
 この卒業パーティーを妨害した罪にも問われるのではないかと汗が出てくる。
 結局は、権力だ。
 結局は、身分の大きい者だけが勝つのだ。

 前を向けば、まだヒューゴがゴチャゴチャと何かを言っている。
 急に冷静になった。
 どうしようも、出来ないのだと。

 どうしようもできないのならば。
 せめて、あの女を殴って。
 死んでしまおうかと思った時だった。



「あなたたちは何をもって、彼女を犯罪者に仕立てるのですか?」



 聞き覚えのある声に振り向くと。
 ドレスアップされた生徒の中で唯一、制服姿のテイリーが立っていた。
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