White Snow



「倖~」
彰に絡んでいた同期が酎ハイを片手にこちらにやってきた。
「倖~、飲んでるか~?」
「うん。飲んでるよ」
酔っ払いだからと適当に返事をする。
「中村も彼女できたしさ~、倖にも長いこと付き合ってる彼氏いるだろ~」

「うわっ。何絡み酒してんですか!」
「そうそう!ちょっともう飲み過ぎですよ!」
「あ。この焼き鳥食べます?はい、あーん」
一緒に飲んでいた女性陣が慌てて話を逸らす。

「あーん、おいひい~。とうとう俺にもモテ期到来?・・・あれ?倖、指輪は?」
「あ、ばか!」
北山さんが慌てる。

「え?指輪?」
「ずっと右手の薬指に指輪してただろ」

「もう、飲み過ぎ!ほら、あっちで呼ばれてますよ」
沖さんが向こうに追いやろうとしている。

「違うから!彼氏に貰った指輪じゃない」
「「「え?!」」」

一緒に飲んでいた女性陣が一斉に振り返った。

「あの指輪は初めて貰ったボーナスで買った、自分へのご褒美だったの。最近痩せて指輪が弛くなってしまったから、落としたくなくて外したの」
「え?てっきり、彼氏と別れたのかと思ってたよぉ」

でもそれを言わない同僚たちの優しさがありがたい。
それと同時に言っちゃう同期のバカさ加減に笑えて来る。

「ああ。でも、彼とは別れたから」
他愛もないことのようにさらっと言ってやる。
だって彰も聞いているはずだから。
彰にまだ未練があるなんて、彰にはばれたくない。
彰も他の営業部の何人かもこちらに目を向けている。

「まじかー!倖、でも、まあ、あれだ!俺がいる!」
同期はなんと言ったらいいのかわからないのだろう、あからさまに目が泳いでいる。

「あははは!なに動揺してんのよ。別れて結構たつし、もうなんとも思ってないから変にうろたえないでよ」
と笑う。
「よし、倖。今日はのむぞー!独り者同士のむぞー!」
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