White Snow
エレベーターから降りると、前野君はマンションのエントランスの柱に寄りかかって立っていた。

前野君も同じような服装をしているから、これであってるんだろうなとほっとする。

私服を見るのは初めてだったけれど、足の長い前野君が履いているブラックジーンズがかっこいいなと思った。

エントランスの自動ドアを開けてゆっくり近づくと、前野君が私に気付く。
すがっていた壁から離れながら、スマホをダウンコートの内ポケットにしまった。

「お待たせ」
「俺の方こそ、急に誘ってすみません。予定、大丈夫でしたか?」

互いに近寄り、隣に立つ。

「うん。片付けしてただけだから」
「ああ、年末の大掃除?」
「うん。そんなかんじ」
彰の荷物の断捨離とか説明したくなくて、話を終わらせた。

「ねぇ、動きやすくて暖かい格好って、これでよかった?」
二、三歩さがって、両腕をばっと広げ、服装を見せた。

「凄くいいです」
前野くんが私をきゅっと抱き締めた。
「え?!」
びっくりして固まる。
「かわいい」
すぐに体を離し、にこっと微笑まれた。
じゃ、行きましょうかと、自然に手を繋がれ、外に出た。

一瞬の出来事だったとはいえ、前野君の距離感の近さに動揺する。
先週ツリーの前で会うまではこんな感じじゃなかった。
用事があるときしか話さなかったのに、彼の変化に驚いた。
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