White Snow
昼間の出来事に思いを馳せていたら、突然、肩をポンと叩かれた。

彰!?

優しく肩に手を置く彰を見上げ・・・前野君だ・・・。

私の肩に手を置いているのは、営業部の後輩の前野君だった。
彰では、なかった。



「大丈夫ですか?」
と心配そうに私をのぞき込んでくる。

彰じゃなかった・・・。
当たり前のことだ。
彼女と交際宣言した彰が思い出のツリーになんて来るわけがない。
分かってる。もう終わったって分かってる。

前野君に『大丈夫だよ』って言わなきゃ。心配そうな顔して私を見ている。
『あまりに綺麗でボーっとしちゃってた』って笑わなくちゃ。


「・・・だい」
声を出すと、目の前が滲んだ。
ツリーに飾られた豆電球が、ぼやける。
ヤバい!
泣いてしまう!
慌てて下を向いたが、一度出てきてしまった涙を止めることができなかった。



会いたい・・・彰に会いたい・・・。
もう一度好きだと言って。
触れて。
抱きしめて。
会いたい。
会いたい。
会いたい。

・・・・彰・・・・。


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