White Snow
目の前に前野君がいるのはわかっているけど、彰への想いが次から次へと溢れてくる。止まらない。
「倖さん」
前野君が私の名前をよんだ。
急に目の前が、暗くなった。
頬にふんわりとしたダウンコートの柔らかさが押し付けられる。
背中に大きな掌の感触が伝わる。
もう片方の掌に後頭部を包まれ、温かいと思った。
同時に、前野君に抱き締められていると分かった。
「ま、前野く」
「冷たい。倖さん、めちゃくちゃ冷たいよ。ちょっとごめんね」
謝った前野君は背中から回したいた手を放して、少し私から離れた。
前野君の手は、彼のダウンコートのチャックをさっと下までおろし、私の両手首を掴んだ。そのまま自分の背中に引き寄せ、スーツとコートの間に私の手を引っ張り混んだ。そして、広げられたコートごと、抱き締められた。
一瞬で、私は前野君のコートの中にいる。
前野君のスーツごしに彼の体温が、両手に、頬に伝わる。
大きな掌で背中を擦られる。
「うわあ、冷えまくってるじゃん」
「ちょっ、あのっ、前野君」
動揺する私に
「じっとして!」
「俺、こんなに冷たくなった倖さんを、ほおって帰ることもできないし、隣に座って泣いてるのをみてることもできません。俺、温めますから。大人しくこのまま泣いてください。」
「泣いてくださいって。そこは泣き止んでじゃないの?」
「泣きたいときは泣けばいい。けど、このままじゃ風邪ひくよ」
「フッ。変な人」
「ごく、たまに言われます」
前野君はごしごしと背中を擦ってくる。
「大丈夫だよ、泣いてないから」
「は?めっちゃ泣いてたじゃん」
「いや。もう泣き止んだ」
少しだけ体を離してのぞき込まれる。
「あ。本当だ」
もう一度抱きしめて、背中をごしごしされる。
「あの。泣いてないって分かったよね?」
「はい」
「えっと、離してもらえるかな?」
「もう少ししたら」
「えー」
前野君はずっと背中を擦ってくる。
「暖かいですか?」
「・・・うん」
「ほら、手、しっかり背中に回してください」
「いやいや、冷たいから」
「冷たいから回すんですよ、ほら」
「うー」
「照れない。俺だって恥ずかしいんです。温まるまでだから。ほら」
「ふっ・・・はい」
そっと背中に手を置く。
頬が胸に押し付けられる。
・・・温かい・・・。
目を閉じると、鼓膜から前野君の心臓の音が聞こえた。
背中に回した掌から熱が伝わる。
閉じた目から再び涙が溢れてくる。
「あったかい・・・」
前野君のご厚意に甘えさせてもらうことにして、そのまま少し泣かせてもらおう。
前野君は私の肩が震えていることに気が付いただろうか?
前野君は何も言わずに、ずっと背中を摩ってくれている。
「倖さん」
前野君が私の名前をよんだ。
急に目の前が、暗くなった。
頬にふんわりとしたダウンコートの柔らかさが押し付けられる。
背中に大きな掌の感触が伝わる。
もう片方の掌に後頭部を包まれ、温かいと思った。
同時に、前野君に抱き締められていると分かった。
「ま、前野く」
「冷たい。倖さん、めちゃくちゃ冷たいよ。ちょっとごめんね」
謝った前野君は背中から回したいた手を放して、少し私から離れた。
前野君の手は、彼のダウンコートのチャックをさっと下までおろし、私の両手首を掴んだ。そのまま自分の背中に引き寄せ、スーツとコートの間に私の手を引っ張り混んだ。そして、広げられたコートごと、抱き締められた。
一瞬で、私は前野君のコートの中にいる。
前野君のスーツごしに彼の体温が、両手に、頬に伝わる。
大きな掌で背中を擦られる。
「うわあ、冷えまくってるじゃん」
「ちょっ、あのっ、前野君」
動揺する私に
「じっとして!」
「俺、こんなに冷たくなった倖さんを、ほおって帰ることもできないし、隣に座って泣いてるのをみてることもできません。俺、温めますから。大人しくこのまま泣いてください。」
「泣いてくださいって。そこは泣き止んでじゃないの?」
「泣きたいときは泣けばいい。けど、このままじゃ風邪ひくよ」
「フッ。変な人」
「ごく、たまに言われます」
前野君はごしごしと背中を擦ってくる。
「大丈夫だよ、泣いてないから」
「は?めっちゃ泣いてたじゃん」
「いや。もう泣き止んだ」
少しだけ体を離してのぞき込まれる。
「あ。本当だ」
もう一度抱きしめて、背中をごしごしされる。
「あの。泣いてないって分かったよね?」
「はい」
「えっと、離してもらえるかな?」
「もう少ししたら」
「えー」
前野君はずっと背中を擦ってくる。
「暖かいですか?」
「・・・うん」
「ほら、手、しっかり背中に回してください」
「いやいや、冷たいから」
「冷たいから回すんですよ、ほら」
「うー」
「照れない。俺だって恥ずかしいんです。温まるまでだから。ほら」
「ふっ・・・はい」
そっと背中に手を置く。
頬が胸に押し付けられる。
・・・温かい・・・。
目を閉じると、鼓膜から前野君の心臓の音が聞こえた。
背中に回した掌から熱が伝わる。
閉じた目から再び涙が溢れてくる。
「あったかい・・・」
前野君のご厚意に甘えさせてもらうことにして、そのまま少し泣かせてもらおう。
前野君は私の肩が震えていることに気が付いただろうか?
前野君は何も言わずに、ずっと背中を摩ってくれている。