うさぎ系女子はライオン系男子に翻弄されて






「ふう」

人気のない廊下の影に、わたしは王子様にハグされたまま連れていかれた。

「東雲さんの髪の毛、細いから絡まりやすいんだね」

「…っ」

うう。至近距離で話しかけないで。こんな地味なわたしなんかに。

しかもわたしの名前…なんで知ってるの?


「…どうしたの?」

「なななななんでもない、です!と、とりあえず、その…ハグをやめていただきたいです」

「なんで?」


王子服部くんは、わたしの髪の毛をほどきながら聞いてくる。


「え、その、、それは」

「この状態のほうがほどきやすいんだけど。ほら、できた」


ようやく解放された。


「ありがとうございます…」


ほてった顔を見られないようにうつむく。


「敬語じゃなくていいよ。同じクラスじゃん。仲よくしよ?」


「えっ?同じクラス?」


顔をあげる。
整った綺麗な顔がこっちを見つめていた。

ウソ。知り合いが誰一人いないショックで、クラスメートをしっかり確認してなかったみたい。また情けなくなる。


「そうだよ。これから1年よろしくね、東雲さん」

「よろしくお願いします、王子様…あっ!」


やばい。
はずみで王子様、って…!!
どうしよう、どうしよう。
初めて会話するのに王子様呼び、キモすぎる。


またこみあげてきた恥ずかしさでどうしようもなくなって、わたしは踵を返して走り出した。


「待って!東雲さん!」


声が聞こえたけど、もう振り返ることなんてできっこない。

人見知りすぎるわたしは、いつもこんな失敗をしてばっかりだ。


始業式早々、涙が出てきて、ほっぺたを濡らした。
< 4 / 22 >

この作品をシェア

pagetop