うさぎ系女子はライオン系男子に翻弄されて
「ふう」
人気のない廊下の影に、わたしは王子様にハグされたまま連れていかれた。
「東雲さんの髪の毛、細いから絡まりやすいんだね」
「…っ」
うう。至近距離で話しかけないで。こんな地味なわたしなんかに。
しかもわたしの名前…なんで知ってるの?
「…どうしたの?」
「なななななんでもない、です!と、とりあえず、その…ハグをやめていただきたいです」
「なんで?」
王子服部くんは、わたしの髪の毛をほどきながら聞いてくる。
「え、その、、それは」
「この状態のほうがほどきやすいんだけど。ほら、できた」
ようやく解放された。
「ありがとうございます…」
ほてった顔を見られないようにうつむく。
「敬語じゃなくていいよ。同じクラスじゃん。仲よくしよ?」
「えっ?同じクラス?」
顔をあげる。
整った綺麗な顔がこっちを見つめていた。
ウソ。知り合いが誰一人いないショックで、クラスメートをしっかり確認してなかったみたい。また情けなくなる。
「そうだよ。これから1年よろしくね、東雲さん」
「よろしくお願いします、王子様…あっ!」
やばい。
はずみで王子様、って…!!
どうしよう、どうしよう。
初めて会話するのに王子様呼び、キモすぎる。
またこみあげてきた恥ずかしさでどうしようもなくなって、わたしは踵を返して走り出した。
「待って!東雲さん!」
声が聞こえたけど、もう振り返ることなんてできっこない。
人見知りすぎるわたしは、いつもこんな失敗をしてばっかりだ。
始業式早々、涙が出てきて、ほっぺたを濡らした。