優しい微笑みに騙されて
#4
◆ ◇ ◆

「ねぇユカさん☆貴方何故そこまでレン様のお願いを断る必要があるのですか?☆」
レンさんについて行った私は仮面を付けていた男にただひたすら話しかけられている。なぜ、"仮面を付けていた"と過去形なのかというと、男が私とレンさんだけになった瞬間に仮面を外したからだ。その顔は予想以上に整っていた。綺麗な栗色の長い髪は後で一つ結びにしており、髪と同じ透けるような栗色の平行な瞳はとても美しい。仮面を付けているのは勿体無いくらいの美貌だった。
「ねぇ、何回無視したら気がすむんですかね☆流石にイライラするんですよね☆」
何も答えない私に男は少しずつ怒りを隠せなくなってきていた。私を呼び出した当の本人のレンさんは、私の前の椅子に優雅に座っている。
(何、このカオス状態)
真っ先に出てきた感想はそれだった。用があるならさっさと教えてほしい。そう思った時だった。
「ユカ…君のお父さんは今は生きてるのかい?」
突然レンさんが口を開く。
「何故、それを?」
レンさんが私にそれを尋ねる理由がいまいちよくわからなく、そう気付けば返していた。
「何故?そんなの関係ない。僕が知りたいと思った。だから聞いただけ」
答えになっていない返答が返ってくる。これ以上は、何も聞いても教えてくれなそうだな。
「私のお父さんは、何年か前に死にました。突然。誰かに殺されたかのように急にです」
私はそう言った後に、レンさんを軽く睨む。
「もし、私のお父さんの死に関係している人がいたら絶対に。そいつだけは許さない」
何故それを、レンさんに伝えたのかは自分でもわからなかった。レンさんは私を探るような視線で見つめると口を開く。
「そっか。なら、僕が知ってることを教えてあげようか」
レンさんはそう言うとにっこり微笑む。
「一応僕は、君のお父さんとの知り合いだからね」

レンさんはそう言うと不気味なほど整った笑顔を見せる。気づけば私は、レンさんの話に没頭していた。
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