優しい微笑みに騙されて
◆ ◇ ◆

「それ、本当の話ですか?」
「嘘を言う必要なんてないだろう?本当だよ。君の学校の生徒の中に、ユカのお父さんを殺した犯人がいて、それを探すためにこのゲームを開催した」
レンさんはそういうと、椅子から立ち上がり、私の髪の毛に触れる。
「だからね、全員を疑わないと。全員を殺さないと。君のお父さんを殺した人が平然と生き残ってしまうんだよ。殺さないと。殺そうよ。ユカの手でしっかり」
レンさんは私の耳元で、甘い声でそう呟く。けど、
「私は、何もやってない生徒を殺すなんて出来ません。ましてや、私に人間を全滅させたいから協力してくれないかい、などと言った相手のことを、そう信用したくもない」
あの時、されたお願い。それはあまりにも残酷なものだった。思い出したくもない。何が人を殺せだ。信じられない。今、私に教えてくれたことだって、嘘かもしれない。私に人を殺させようとして仕掛けた罠かもしれない。そんなに簡単にレンさんを信用してはいけない気がした。
「ん〜。無駄に頭が回るんだね。ウザいなその頭。僕のこと以外考えられないようにしてやりたい」
「っ⁉︎」
突然レンさんが呟いた恐ろしい言葉に私は少し後ずさる。しかし、後には仮面を付けていた男がいる。そしてここはどこかの部屋。私が逃げるなど不可能なことだ。
「折角、ユカをこっち側に付けようとしたのに、残念だなぁ…」
レンさんはそういうと、のんびりと近づいてくる。
「逃げないでよユカ。傷つくな。あぁけど」
私の目の前で立ち止まり、レンさんは一度言葉を区切る。

「僕を恐怖の目で見るそんな姿も愛らしい」

やばいと感じた。レンさんは完全に狂っている。

「それじゃあ、第二ゲームも頑張ってね?」
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