優しい微笑みに騙されて
何も、できなかった。私、堀崎ゆかはただ呆然と今おこった出来事を見ていることしか出来なかった。もし、あの時私が、レンさんに早く謝っておけばこうはならなかったかもしれない。これ以上、私がレンさんから逆らおうとすると、今度はるなや、尋、馨にまで被害が及ぶ可能性だってある。なら、私がレンさんに謝って、その後は協力しているように見せかけて協力しなければ良い。私に出来る事は、そのくらいしか見つからなかった。
「ゆかちゃん、さっきの話の続き教えてくれない?」
るなが私にそう問いかける。さっき、話そうとした時にレンさんが遮る様にやってきた。教えたらいけないという意味だと思うと、今みんなに教えるのは危険な気がした。私はレンさんの居場所を知らない。きっと知ってるのは仮面をつけた男だけ。そしてその男はすぐ近くにいる。彼に頼んで、レンさんに会いにいけば良い。
「ゆか…?」
黙り込む私を心配したようにるなが声をかけてくる。
「ごめん…」
私は消えるような声でそう答えてからその場を去る。これ以上、みんながレンさんの手によって傷付けられるのは嫌だった。

「すみません、レンさんの所に連れて行ってくれませんか?」
私が仮面の男に声をかけると、彼は頷いた。
「素晴らしい判断ですね☆」
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