優しい微笑みに騙されて

◆ ◇ ◆
(ゆか………？)
ふと、僕の声のあと、ゲームを始めた人たちの中から、少し、気になる名前が聞こえてきた。"ゆか"その名前は、聞き覚えがあった。思わず、声が聞こえた方に視線を向ける。4人組の、美男美女のグループに1人、ひときわ目立つ美少女がいた。綺麗な茶髪の長い髪はサラサラで、ぱっちりと大きい栗色の目は、トール兄様と似ている。この面影、この雰囲気そして"ゆか"という名前で思い浮かぶ人物が1人脳に浮かぶ。

ユカ・リサキ・ストライア

ゆかの父親が何の力も持っていないただの人間と結婚して出来た子供。女の子としては珍しく強力な力を持っていることからストライアの王族になった少女。僕の、書類上の妹だ。昔はよく色々な話をしていた。そんな彼女が、成長して今この場にいる。なぜ、トール兄様が急に僕にゲームの進行役を押し付けたのかが少しわかった気がした。
(やばい…今すぐユカを触りたい)
やろうとすればすぐに触れるというのに、ゲーム中だからすることはできない。後少しの辛抱だ。
「ユーリ」
後ろから聞こえたレン様の声に振り向く。レン様はいつ見ても綺麗な笑顔を浮かべて言った。
「あの4人、絶対に人を殺せない。ゲームオーバーになる。ユカが可哀想だろう？」
「レン様がやれば、ユカだけ死なないように出来るのでは？」
僕のその問いにレン様は楽しそうに笑った。
「ユカはゲーム中、コロコロ表情が変わるんだ。見てて楽しいよ。折角ならもっと、それを見てようよ」
ユカの表情…。
(すごく見たいなぁ…)
「で？誰を殺せば良いんですか？」
「あの眼鏡をかけてる男子を。ユカを操って殺せ」
レン様が言った眼鏡の男子。やけにユカと距離が近い。確かにこれは、ウザいな。
(殺すか)
ユカを操って眼鏡の男子に向かって発砲させる。それを見た時のユカの顔は……

本当に可愛かった

絶滅と恐怖に染まった顔。見ていて飽きない。
「さて。そろそろ第5ゲームが終わるね。一緒にユカに会いに行くかい？」
レン様のその誘いに、僕は笑顔で頷いた。