優しい微笑みに騙されて
「うっ………」
尋とるなと歩いていた時、突然激しい頭痛が走る。
「ゆか……?」
前を歩いていた尋が心配そうに覗き込んでくる。その瞬間、何かがプツンと切れた気がした。気がつくと、周りに何もない。辺り一面が真っ白な世界になっていた。
(どこ…ここ……)
歩き出そうとした時、目の前に映像が流れ出す。そこには、幼い頃の私と、今と何も変わらない容姿のレンさんが映っていた。なぜか私はそれを、食いついて見ていた。

『君がユカかい?はじめまして。名前はレン・イリス・ストライア』
『れんさま!』
『フフッそれで良いよ』
『おとーさまがね、まいにちいってたの!れんさまはすごいひとだよ〜って!』
『彼が…?それは嬉しいね』

そこで映像は途切れ、今度はユーリさんが映る。

『この子がユカですか?すごい可愛いですね‼︎まるで天使です』
『あなただぁれ?』
『はじめまして‼︎今日からユカの兄になるユーリです。よろしくね、ユカ』
『ゆーりにーさま!おとーさまが、ゆかにおにーさまができるっていってた!』

また、画面が変わる。

『ユカ…?どうしたんだい?』
『れんさま…!なんか、くるしーの。からだがあつくていたい…』
『……大丈夫だよ。これ飲んで。少しお話ししよっか』
『おはなし?』
『そう。実はね、この国にいる人たちはみんな、不思議な力を持ってるんだ。昔、何の力も持ってない人間たちに、理不尽に追い出された人たちが集まってる』
『れんさまたちをおいだすなんてひどい!』
『そうだね…。この力を持ってる人たちにはね、少し特徴があるんだ。まず一つは、子供を産めない』
『じゃ、じゃあゆかのおとーさまは力ないの?』
『ユカのお父さんは、一回力を捨ててるからユカを産めたんだよ。今はまた力を持ってる。二つ目の特徴は、ある程度まで成長すると歳をとらなくなる』
『だからみんなおかおきれいなの?』
『そうだよ。そして三つ目は、女の子で力を持っている人は存在しなかった』
『………?そしたら、ゆかはなんなの?』
『そこでユカが生まれたんだ。女の子でも力を持ってる子。それがユカなんだよ。その力は、上手く抑えないと暴走してしまう。さっきのユカの苦しさも、力の暴走による物なんだ。だからね、ユカ』
『なぁに?』
『ユカが大きくなって、歳をとらないくらいの年齢になったら、ストライアの王族の3人の中の誰かと結婚しようね』
『さんにん…?れんさまと、ゆーりにーさまと、あとだぁれ?』
『今は色々あってここにいないけど、もう1人、トールっていうユカのお兄さんがいるんだよ。今度帰ってきたら、一緒に挨拶しようね』
『うん‼︎』


『ユカ…‼︎今すぐこの世界から逃げよう』
『おとーさま?どーしたの?』
『ユカ…、ユカのお母さんが、レン様に殺されたんだ。今すぐ逃げないと、僕たちの命が危ない…』
『れんさまが?おかーさまを?』
『あぁ、だから…』
『おとーさま?』
『今までの記憶を、全部忘れてくれ』



「ゆか……‼︎」
尋の声で、ハッとする。前で心配そうな顔でるなと尋が私を見ていた。今のは、消された私の記憶…?なぜか見た瞬間に、今までのピースが全てはまったような感覚になった。ただ、今ので謎の確信が湧く。私のお父さんを殺したのは、レンさんで、私という珍しい女子を連れ戻すために、このゲームをやった。トールさんが言ってた、"ユカさんのため"それは、きっとこういう意味だったのだろう。


[さあ‼︎そろそろ第6ゲームを始めるよ〜]


ユーリさんの声が響き渡った。
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