優しい微笑みに騙されて
建物の裏側まで逃げ込んだ私達は円になり、話し合いを始めた。
「流石に、躊躇いもなく、同じ学校の生徒を殺す人なんていないよな?」
咲がまるで、そう自分に言い聞かせるように呟く。けど、その通りだ。突然人を殺せと言われて、躊躇なく殺すなんて人はあまりいないと思う。そんなことをしたら、犯罪だ。
「確かに、最初はいないかもな。けど」
馨はそう言うと一回言葉を区切り、眼鏡をかけ直す。
「あの不気味な男がそれについて対策していないわけがない」
馨のその言葉を聞いて、私達は全員息を呑む。正論すぎて何も出てこない。その通りだ。あの男が何も考えずにこのゲームをやっているとも思わないし、人を殺すということを躊躇う人が多くいるというくらい、流石に知っていて、何かしら対策を練っている。そう考えるのが妥当だろう。
「運が良いのか、悪いのか。このグループは全員元々顔見知りで、幼馴染で、全員運動もできる。そこの点は、他のグループより有利になるはず」
咲はそう言うと立ち上がる。
「怖いのは、みんな同じだ。だから、全員で協力して、必ず誰も殺さず生き残ろう」
咲の力強いその言葉に私達は全員頷く。きっと、私も、るなも、咲も、馨も、尋も、怖いのは同じだ。けど、全員で一緒なら、少しだけ。心が楽になる気がする。




[あ☆1つ言い忘れたけど、このゲーム5分たっても誰も死者が出ない場合、どこかのグループ全員さよならだから頑張ってね☆]




まるで私達の心を読んだかのようなタイミングで、あの男の声のアナウンスが入る。やっぱり、対策はされていた。あんなことを言われたら、誰か1人くらい殺そうと思ってしまうかもしれない。

[おお☆言った側から1人さようならしたよ☆お見事お見事☆]

またアナウンスが入る。1人、さようならしたってことは、誰かが誰かを殺した。一度こうなると、大体道は二つに分かれる。

1人殺されたならもう殺さなくて良い、というパターンと、1人目が着火になって火事のように周りへと広がっていくパターンだ。


「こんな所に隠れている奴がいるぜ。弱そうだから殺しちゃおうよ」
突然、建物の裏側に何人かが入ってくる。全員体育体系の男子だった。そして、こいつらも馬鹿ではない。両側から入ってきた。逃げ道は1つだけ。私達は顔を見合わせて頷く。咲がるなを上に投げて建物の窓に放り込む。残りの私達4人は軽くジャンプし、建物の建設時にできた考えられる窪みや出っ張りに、足や手をかけ、そのままるなを放り込んだ場所に入り込んだ。
「あいつら‼︎」
外であの複数名の男子達が声を上げているが私達はお構いなしに動く。
「み、みんなありがとう」
るなが震えた声でそう呟いた。るな以外の全員が運動神経はそれなりにあり、るなもダンスをやっているため、そこそこはあることを良いことに行った避難行動だ。
「あの男子らの様子、あいつら既に人を殺してる」
咲はそう言うと、ため息を吐く。
「もう多くの人に火がついて状態だ。同じ場所にいるのは危険だ。今はとりあえず、逃げるしかない」
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