王様に逆らった時【完】
「ええ!せっかくだから見ていきなよ!」
慌てた輝明先輩の声。
そう言ってくれるのはありがたいけど…
「でも、」
想ちゃんにこれ以上迷惑かけられない。
「想太もな?いいだろ?」
「…チッ、お前絶対先帰んなよ。」
不機嫌な顔で、私のことを睨む想ちゃん。
ってことは、見てていいってことだよね?
「う、うん!!」
想ちゃんはきっと私のことパシリくらいにしか思ってないもんね。
そんなパシリが部活見学しにくるなんて、うざいし、目障りだよね。
初夏の風が通る体育館、響くバスケットボールの音、元気な掛け声、光る汗。
想ちゃんを包む全てのものから目が離せなかった。
きっとこれから先見学なんてさせてもらえないだろうから、と全ての光景を目に焼き付けた。
パスを受ける想ちゃん。
ゴールを決める想ちゃん。
後輩に声をかける想ちゃん。
全てが新鮮で、心が踊った。ひとつひとつを見逃さないように。