王様に逆らった時【完】


待ってくれない。


どんどん離れていく背中。



こんなの嫌だ。ムカつかれたままなの嫌だよ。


嫌われたくない。



「そ、想ちゃんっ」



どれだけ追いかけたって、立ち止まってくれない想ちゃん。



涙が溢れてきて、声がこもる。





「…泣いてんの?」



やっと止まって振り返ってくれたころには、もう大号泣だった。




「だって想ちゃ、が、」




「俺が何?」



何故か少し嬉しそうに上がる唇。


離れていた想ちゃんがまた近づいてくる。




「わ、私のこと嫌いになっちゃうから、」




「っ、へー、それで泣いてんだ?」



満足そうな目。



…どうしてそんなに嬉しそうなんだろう。



「まあせいぜい俺に嫌われないように頑張れば。」



まじまじと顔を見て微笑んでくる想ちゃんに、体の熱が上がるのがわかる。


…どきどきしちゃう。



涙で滲む視界が突然真っ暗になった。

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