王様に逆らった時【完】
動物園に入ってそうそう、御目当ての虎の赤ちゃんを見にきた。
「わぁー!可愛い!」
ふわふわしてて、歩き方もぎこちなくて最高に可愛い!
「ほんとだな。」
嬉しそうにトラの赤ちゃんを見る想ちゃん。
こんなに優しい顔するんだね。
「想ちゃんって意外と動物好きだよね。」
昔から横柄で王様的存在だったけど、動物だけにはすごく優しかった。
いつだったか野良猫を助けて、傷だらけになって帰ってきたこともあった。
「意外ってなんだよ。」
少しむっとする想ちゃん。
…私またなんか変なこと言っちゃったかな。
「え、っと、想ちゃんはどの動物が好きなの?」
ぎこちなく展開していく会話。
「…うざき。」
少しの間を置いて、恥ずかしそうに答えた想ちゃん。
…意外。初耳。
「そうなんだ。」
ここの動物園うさぎのふれあいコーナーもあったような。
あとで餌やりしに行こう。
「お前に似てて、甘えん坊で寂しがりだから。」
え…どういうこと?
…私に似てて?
私に似てるから好きってこと?
私の驚いた表情をみて、自分の発言に気付いたのか混乱している様子の想ちゃん。
「…なんでもない。忘れろ。」
そう言って先に歩いて行ってしまった想ちゃんを追いかけることしかできなった。
…なんだったの?
発言の意図はわからないままだった。