王様に逆らった時【完】
「さくら。」
何年か振りに呼ばれた名前に、ドクンと胸が高鳴る。
鼓動が一気に騒ぎ出すのがわかる感覚。
「え、?」
…幻聴?
「ん。」
前に突き出された想ちゃんの手には、私がさっき売店で見ていたトラのぬいぐるみキーホルダーがあった。
「…これ、買ってくれたの?」
私のためにわざわざ?
…どうしよう。
すごく嬉しい。
「いらないなら捨てる。」
なかなか受け取らない私に痺れを切らして、自分のカバンに仕舞おうとする想ちゃん。
「っいる!いるよ!…ありがと!一生大切にする。」
必死に想ちゃんの手に収まる、キーホルダーを死守する。
「っ、大袈裟。」
「…すごく嬉しいんだもん。」
手に包み込んだキーホルダーを見つめる。
…ああ、こんなに幸せでいいのかな。
キーホルダーと想ちゃんを見比べるとやっぱり似ていて、笑みが溢れた。
明日から学校のカバンにつけて行こう。