王様に逆らった時【完】
「あなたはあの時の姫ですね?」
・
「王子様…」
・
「あなたにお会いしたかったのです。」
順調に進んでいく劇。
今までで1番のものが完成している。
舞台も立ってしまえば慣れたもので、セリフだってスラスラということができた。
その時観客席に、見えたのは想ちゃんの姿。
息が止まりそうになる。
不機嫌な目。
交わる視線。
一番大事なシーンなのに頭が真っ白になって、セリフに詰まる。
…集中しなきゃ。
「さくらちゃん…?」
異変を感じて、小さな声で話しかけてくれる佐久間くん。
…早く佐久間くんの手を握らないと。
「…わ、私もお会いしたかったですわ。」
佐久間くんを見つめて手を取る。
チラッと客席を見ると、もう想ちゃんの姿はなかった。
…どうしていなくなっちゃったんだろう。
気になる。
…でも劇に集中しなきゃダメだよね!