子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「これ」
竜神さんが私に書類を差し出す。
「はい?」
横目で私を見る彼は、赤ペンで書類に丸印をつける。
書類は備品の注文リストだ。
「品番と品名が違ってます。どちらを注文すべきかわかりません」
「ああ、それは。新製品ですね。担当に確認しておきます」
「いえ、俺が聞きます」
えっと、そ、それは。
「なにか?」
この前、竜神さんと一緒に第五営業部の部長の提出した領収書の確認に行った。
金額に丸をひとつ追加した形跡があったのだ。
第五営業部の部長は怪しい領収書を出す常連で、その都度説得に苦労する。
『あの、こちらの領収書なんですが……』
と、私が言いかけた横で。
『数字の改ざんは不正行為ですよ』
止める間も無く竜神さんはズバッと言い切り、あわや喧嘩になりかけた。
うまい反論もできず、部長は悔し紛れに領収書を破り捨て、竜神さんは勝利した。
あの部長は仕事はできるらしいが、経費をごまかそうとするセコい人である。ざまあみろと、内心スカッとしたが、そうも言っていられない。