子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 疾風さんのお父さまは書斎にいたらしく、さっきの方とは別の家政婦さんが呼びに行ってくださった。

 客間は畳だけれど和風モダンなテーブルと椅子がある。

「さあ座って」

「はい」

「緊張してるな?」

「だって。緊張しない方が無理」

 あははと疾風さんは笑う。

「言っただろう? 父は円花の評判を藤原専務から聞いて知っていたって。自信を持っていいんだ。ひと言も反対しなかったよ?」

 でも、と言いかけて言葉を飲み込んだ。

 ジタバタしたって仕方がない。反対されたらあきらめればいいんだから。

「わかった。もう大丈夫」

 疾風さんとうなずきあったとき、「やあ、いらっしゃい」と声がした。

 慌てて立ち上がると、遠くからしか見かけたことがない本物の社長がいた。

 着物姿なので会社で見かけるときとは雰囲気が違うが、こうして近くで見ると疾風さんに似ている。鼻が高く、引き締まった口もととか。

 相好を崩して「待っていたよ」と微笑む社長は、ソファーに腰を下ろす。

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