子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 間もなくテーブルに出された和菓子の話になり、庭の鯉や他愛もない話をした。疾風さんに聞いていた通り気さくな方で、結果に反対する様子も見せない。

 私自身についても、なにも聞かれなかった。

「結婚は年明けか?」

「そのつもり」と疾風さんが答える。

「公表はそのときでいいんだな?」

 そう確認されただけで、結婚の話は終わった。

 あっけないほど簡単に。

 和菓子を食べ終わり、お茶を飲み干した頃、疾風さんは席を立つ。

「俺の部屋を見に行こう」

「はい」

 縁側の廊下を歩きながら疾風さんが「な?」と聞く。

「特になにもなかっただろう?」

「うん。よかった」

 疾風さんに彼の部屋を見せてもらったりするうち、持って帰る荷物をまとめるから自由にしていてと言われ、私はお庭を見せてもらうことにした。

 お父さまが『見ていきなさい』とすすめてくれたから。

 外にでて、ホッとしなが池の錦鯉を見つめる。

 呆気なさに肩の力が抜けた。

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