子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
***
営業部に届け物に来た帰り道。ついでに備品のチェックをする。
「はぁ……」
棚の影で溜め息をつく。
辰上家に行ってから数日経ったが父さまの言葉が頭から離れない。
『君はその覚悟があるかな?』
お父さまの厳しい瞳は、私に覚悟がないのを見抜いていた。
反対はしないが孤立しても知らんぞとお父さまは言いたかったんだろう。
疾風さんはなにも知らない。彼が私を迎えに来たときには、すでにお父さまはいなかったから。
相談すれば彼はきっと励ましてくれるだろう。俺がいるじゃないかと言ってくれるに違いない。
でも、それでいいのかな。
頼って守ってもらって。
孤立か体得。
孤立する選択は考えられないとして、教養って努力で体得できるものなの?
疾風さんから感じる育ちの良さは、子ども頃からの環境で身についたんだと思う。今から私がどんなにがんばっても、疾風さんの足を引っ張るだけじゃないのかな……。
自分を卑下するわけじゃないけれど、現実から目を反らすのも逃げだ。
どんなに考えても答えは出ない。
まいったなぁ。
エレベーターの中で上を向き、マイナスオーラを振り払う。
明るい私でいないと疾風さんに心配かけてしまうから気をつけないと。