子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「できるだけ、お、穏便に」

 竜神さんは怪訝そうに首を傾げる。

「あ、いえ。お願いします」

「はい」

 ハァ……。やれやれ。無事を祈るわ。

「もうひとつ。ここ。数字が合っていない」

「あ、ごめんなさい。私のミスです」

 毎日がこうだ。

 私は彼の指導係のはずなのに、指導されている日々なのである。

「それからエントランスロビーの装花。やっぱりあれはよくない。総務として意見すべきじゃないですか、桃井さん」

「またその話ですか」

「会社の顔ですよ。あんな下品でいいと思うんですか? 桃井さんは」

 下品ねぇ。

 まぁ派手だなとは思うけれど。

「どのへんが下品だと?」

「毎回毎回、ゴテゴテし過ぎ。爽やかさがまったくない」

 確かに爽やかさは欠けるかも。

 彼が言う通り、夜の街のお店の方が似合っていそうなアレンジメントではある。

「わかりました」

 一応課長には伝えておきますと言葉を濁しその場を切り抜ける。

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