子作り婚の行方。～年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋～

「せっかくきたんだから、お話しましょうよ。ねーねー円花ちゃんあなた会社いつ辞めるのよ。私てっきり昨日のうちに退職届を提出するもんだとばかり思っていたのに。ねえ、どういうつもり？」

「私は……」
「目障りなの。あなたって本当にずーずーし」

　話の途中で突然、ハッとしたように時野さんは口をつぐむ。

　振り返ると疾風さんがいた。

「円花。行っていいぞ。こんな」
「いいんです。私は辞めますから」

　私は彼の言葉を遮った。

「失礼します」

　揉めないでほしい。私が身を引けばそれで済む。すぺては円満に。

　彼の脇をすり抜け給湯室を飛び出すと「疾風さん」と時野さんの声が聞こえた。

　足早に、しまいには走ってエレベーターに向かう。

　追いかけてきた彼が私の腕を掴んだ。

「お前はそれでいいのか？　何も悪くないのに理不尽な仕打ちをされて、黙ってそれを受け入れて、本当にそれでいいのか？」

「よくない」

　そんなの私だってわかってる。

「だったら」

「しょうがないじゃないですか！」