子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「時野グループがレストランチェーンをリニューアルする」

 社長が娘との結婚を条件に新規取引を申し出てきた。

 娘はクズだが父親は業界でも評判がいいやり手社長だ。流行を先取りし次々と新しいレストランをオープンさせすべて成功させている。大手飲食チェーンの時野と縁ができればうちは更なる飛躍を望めるというわけだ。

「なるほど、時野は成長株だからなぁ」

「嫌なら、その分の契約を今すぐ取ってこいと言うわけですよ」


 俺がなぜ自分の配属先に総務を選んだか、父はやはり見抜いていた。
 理由のひとつに彼女の存在があると。

『好きな女の近くにいたくて総務を願い出たとはな。呆れたぞ疾風』

『そんなんじゃない』

 私情はまったく挟んでいないかといえば嘘だ。
 だが総務に入った本来の目的は忘れていないし、得たものは大きい。俺の報告を聞いて父もわかっているはずだ。

『まあいい。どちらか選べ。早いうちにな』

 もちろん反論した。

『時野が社内でなにをしているか知っているのか? 新人イジメ。厄介な仕事は他人に押しつけ自分は楽な雑用ばかり。ろくな女じゃない。円花には――くそっ!思い出すと怒りで血管が切れそうだ』


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