子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
忌々しさを紛らわすようグラスの酒をあおる。
「あの女が円花の酒に薬を入れた証拠が出れば解決するんだがな」
「ああ、例の事件か。男の方はあたったのか?」
溜め息混じりにうなずいた。
「だがそう簡単に白状しない」
男は時野グループの下請けの営業だった。当然口は硬い。『証拠はあるんですか』の一点張りだ。
「そいつらどこの会社?」
会社名を告げると、男の会社の警備は仁さんが役員を務める警備会社が引き受けているという。
「少し調べるか? そういう男ならボロがでるぞ」
「ああ、頼む」
仁さんはその場で電話をかけた。
会社名と男たちの所属する部署と名前を告げ、調べるよう指示して電話を切る。
「すみません」
「いいんだ。そんなやつら、会社にとっても悪影響しかないから、むしろ感謝される」
「そりゃそうだ。うちのやつらなら速攻クビだしな」
「そういうこと」
仁さんは女をとっかえひっかえするが、別れた誰からも憎まれないという希少な男だ。卑怯な真似は絶対にしないし、そう言う男は許せないんだろう。