子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「それで、時野に代わる契約の方は大丈夫なのか?」
「まあなんとか。以前から目をつけていたシンガポールの食品卸会社を手に入れる。既に手は打ったから連絡待ち」
シンガポールの良質な食材を手に入れるだけじゃない。日本の食材を現地に流通させる販売ルートができる。時野ごときの比じゃない。
「さすがだな、目の付け所が違う」
「だてにウォール街にいたわけじゃないんでね」
「じゃあ問題ないじゃん」
まあ、そっちはな。
問題は円花だ。彼女が心を決めなければどうにもならない。
「彼女が逃げ腰だとか?」
返事の代わりにうなずいた。
「疾風お前、もしかして強くでたんだろ、紐でくくる勢いで」
「だって。仕方ないだろ?」
「だめだ。それじゃ。ますます頑なになるだけでしょうに」
まるで今日の俺たちを見たような言い草だ。
「さすが女ったらしっすね。その通りだ」
「それ褒めてるのか?」
「もちろんですよ」