子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~


 秘書課の時野がなにをするかわからないと思っていたが。まさか薬と男を使って彼女を襲わせようとするとは。

 あの夜を思い出すだけでゾッとする。

 俺の背中で桃井は『あったかい』と頬擦りし。俺の首筋に彼女の涙が落ちた。

 そして『寂しいよ』と、呟いたのである。

『もう大丈夫だぞ』

 そう声をかけると、朧げながら俺が誰かわかったのだろう。

『リュージンさん、私、子どもが欲しいよ』

『どうして子どもなんだ? 結婚じゃないのか?』

『結婚……。私、怖くて、誰も好きになれないから』




「仁さん、亡くなった俺の母を覚えてますか?」

「ああ、優しくて綺麗な人だった。茶室で大騒ぎして掛け軸破いちゃって困らせちゃって」

「そうそう。懐かしいな」

 絵の部分が無事だったせいもあるが。それでも母は怒らなかった。

「母は資産家の令嬢じゃなくてさ、それが気に入らない俺の祖母に厳しくされて。結局ストレスだったんだろうな」

 弱ったように亡くなった。

「オヤジはただ闇雲に反対してるわけじゃない。そうなるのを心配しているんだ」
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