子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 などと思いながらついつい見ていたら、ふいに振り返った竜神さんとバッチリ目が合った。

「ん? なんですか」

「あ、いえ。高そうなペンだなぁーと、思って」

 えへへと笑ってごまかした。

 指先でクルッとペンを回した彼は「使いやすいのでね」と肩をすくめる。

「そういえば桃井さん。昨日の夕方、秘書課の時野さんから、またなにか引き受けていませんでしたか?」

 鋭い。

「ええ。で、でも、三十分くらいで作れる資料なので」

 上品な竜神さんは基本的にクールだ。挨拶だけは爽やかだが、誰に対しても容赦なく手厳しい。もちろん私にも。

 彼に言わせると、私は雑用を安請け合いし過ぎるそうだ。

「何度でも言いますよ。お人よしは――」

「バカをみる、ですよね。はい。肝に銘じます」

 大きな溜め息をついて竜神さんは左右に首を振る。

「ありがとうございます竜神さん。気にかけてくださって。でも私も無理なお願いは引き受けませんから大丈夫です。そんなに心配しないでください」

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