子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「なぁ、仁さん。俺は円花の気持ちを多少なりともわかっているつもりでいたんだ。でもそうでもなかったみたいでさ」

「なにか言われたのか?」

「俺んちタワマンの最上階だろ。彼女は夜景が綺麗だってうれしそうに外を見ていたはずなんだが……。あれはショックだったな。『あなたはなにもわかってない。私、本当は高所恐怖症なの』って言うのさ」

「マジか。そりゃショックだ」

「ぐうの音も出なかった」

 俺は結局ひとり芝居をしていたのか?

 そう思いたくはないが。

 円花は子どもが欲しいとは言っていたが、俺を好きだとは一度も言っていない。

「にしても最近俺の周りは順調な結婚聞かないなぁ。なんでだろ」

 仁さんの言う〝俺の周り〟は青扇の面々だろう。

「神林悠に至っては、逃げた彼女をようやく見つけたら悠の子どもまでいたからな」

「まじか」

「嫌いで逃げるわけじゃなし、恋人のためを思って身を隠すんだから、かわいいよな、女の子って」

「恋人のため?」

「疾風の彼女も、きっとそうなんだろうな」

 俺のためなのか?


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