子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
~side円花
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しゃがみ込んで、小さな水槽を見る。
揺れる水草やメダカの追いかけっこを目で追っているといつもなら無心になれるのに、今日は無理そうだ。
「はぁ」
疾風さんとは喧嘩別れになってしまった。
元気でねと握手なんかして、穏やかに別れたいと思ったけれど、やっぱり無理なのかな。
彼は熱い人だから。
『私、本当は高所恐怖症なの』
私の告白は相当ショックだったんだと思う。
疾風さんは絶句して、花火が消えたように瞳の中の炎は消えた。
『俺が結婚するのはお前だ。円花。ほかの誰でもない』
本当はすごくうれしかった。
そんなふうに思ってくれているなんて、夢にも思わなかったから。
私たちはお互いの思惑が一致してのお付き合いだった。
愛なんてない、割り切った関係のはず。
でも、もしかしたら愛してくれるの? と思い始めていた。
ベッドの上で囁く愛の言葉が、熱を帯びていたから。
私だけに優しくて、ほかの女性には目もくれない。
くだらない話もちゃんと聞いてくれて、宝物のように大事に扱ってくれる。