子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
『お知り合いふうの男性が現れて、激しく抗議をしていたので、もう大丈夫かと安心したんです』
でも私は、CDをもらっただけで今まで中身は確認していなかった。
見る勇気がなかったのだ。
疾風さんや水咲先輩と同じように、私もどこかで時野さんを疑っていたのかもしれない。
世の中には知らなくてもいい真実もある……。そう思っていた。
母と今の夫は、父の生前から交際していたという親戚から抗議の声に、耳を塞いだように。
知らないほうが幸せなことだってあるから。
でも、今回は私だけの問題じゃない。
疾風さんの未来にかかわってくる。
彼女が関係ないとわかればなにも心配ない。私は快く身を引くだけだ。
万が一、彼女が関わっていたら、その時は――。
ディスクをパソコンに入れて再生を押す。
***
次の日。いつも通りに出社した。
「おはようございます」
「おはようー」
水咲先輩には退職届を提出してから報告するつもり。
目立たないように課長に話をしよう。仕事も迷惑にならないように引き継いでいかないと。まずは自分の仕事をリスト化してみようと思う。
パソコンに向かうと「おはようございます」と疾風さんの声がした。