子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 社長に背中を向けるのも憚れるので、社長に対して横向きに乗り、所在なくうついた。

 ちょうどいい機会だから、疾風さんから身を引くと自分から言った方がいいのだろうか。

 でも藤原専務もいるからプライベートな話はしずらい。

 迷っていると、社長の方から「君は」と、話しかけてきた。

「これからどうするんだい?」

 あ……。やはり気がかりなのね。

「今日退職届を出そうと思います。お世話になりました」

「なるほど、尻尾を巻いて逃げるというわけか」

 ぴくりと頬が引き攣る。

「すみません……」

 社長の言う通りなんだろう。

 私は戦わずに逃げる。負け犬のように。

 一度、覚悟は決めたつもりだったが、突きつけられた現実には勝てなかったから。

 でもどうしてそんな言い方をするの?

 私に逃げる意外の道があるなら教えて欲しい。なんだか悔しくて唇をかんだ。

「疾風はここを辞めるとまで言ったんだがね」

 えっ……。

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