子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 と、そこでエレベーターは総務課のある三階に到着し、扉が開いた。

「失礼します」

 頭を下げて、扉が閉まるの見届ける。

 そんな……。

 総務課の扉の前で一呼吸おき、中に入ってちらりと疾風さんの背中を見てから自分の席に向かう。

 背筋が伸びた綺麗な背中に、心の中で訴えた。

 どうして辞めるなんて。

『疾風はここを辞めるとまで言ったんだがね』

 疾風さん……ダメだよ、そんなこと言っちゃいけないよ。

『あたなは結局私の気持ちなんてどうでもいいんですよね? 無理を通しても辛いだけなのに、どうしてわかってくれないんですか』

『ああそうか。わかったよ。好きにしろ』

 ごめんなさい。
 私、どうしたら。

「円花ちゃん。はーい、頂き物だって」

「あ、はい。ありがとうございます」

 昔ながらの温泉まんじゅうを手に取ると、不意に吐き気が込み上げた。

 うっ……。

 かすかに匂いを感じただけなのに。

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