子作り婚の行方。～年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋～

　まだなにか言いたげではあるが、彼はあきらめたように頷く。

「ところで今日ですが、覚えていますか？」

「はい？」

「弁当持ってこなかったですよね？」

「ヘッ？　あ、はい。持ってこなかったです」

　竜神さんの口元に、薄っすらと笑みが浮かんだ。

　私はいつもお弁当を持ってくるのだけれど、今日は竜神さんにランチに誘われた。なんでも私に聞きたいことがあるらしい。

「予約してあるので、キャンセルはなしでお願いします」

「はい。了解です」



　そして迎えたランチタイム。
　正午ぴったりに私たちは席を立った。

　黙々と竜神さんの後ろをついてきたけれど――え？

　隠れ家のような入り口は一般住宅のように小さくて看板は見あたらない。本当にお店なの？　と怪しみながら中に入ると、立派な純日本家屋が現れた。

　玄関の上に掲げられた名前を見て驚いた。

　縁はなくとも名前だけは知っている有名な料亭である。

「うわぁ。こんな高そうなところで？　本当にいいんですか」