子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「名誉毀損で訴えます! あの男が私に罪をなすりつようとしているんですよ。それをまことしやかに」

 私は藤原専務に「決着をつけてきます」と告げた。

 これは私の問題だから。

 勇気を奮い起こし、思い切り扉を開けた。

「証拠ならあります」

 

「円花?」

「な、なによあなた立ち聞き?」

 私の後ろから藤原専務が顔を出した。

「私が呼んだのですよ」

 もしかして。書類を取りに来るように秘書の女性に言ったのは藤原専務なの?

「さあ、桃井さん、言うべきことを思う存分言いなさい。あなたは負け犬なんかじゃないでしょう。誰よりもがんばる強い女性だ」

 専務……。
 ありがとうございます。

 私は疾風さんの目を見てうなずいてから、上着のポケットの中にある写真を取り出した。

 夕べ確認した防犯カメラの映像には、私がトイレに立ったときに私の隣の席の男性が薬を入れているシーンがしっかりと写っていた。

 時野さんは、その様子を見届け、男性とうなずき合ってから席を立っていた。

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