子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「いや、狭さなんかどうでもいいさ。はいお土産のケーキ。途中で買ってきた」

「ありがとう」

 メダカを取りに来たときに一度、彼はこの部屋を見ている。

 小さな台所と、押入つきの六畳間という私のお城だ。

 カラーボックスをふたつ並べたその上に、お花を一輪飾り、父の写真がある。

 疾風さんは以前来たときのように、最初に父の写真に手を合わせてくれた。

「今日はね、暑かったから冷麺なの。食べる?」

「おお、いいな冷麺はひさしぶりだ」

 シャワーは浴びる?と聞こうとして思いとどまった。

 彼は話をしにきただけだから。

 どうぞと座布団を出す。

 向かい合わせで挟むテーブルは小さいから麦茶に冷麺、ヤンニョムチキンが乗ったお皿を置くともういっぱいだ。

「鶏肉も韓国料理か」

「そう。甘辛いの。すぐ近くの韓国料理店でテイクアウトしたものだから本格的よ」

 物珍しそうに疾風さんはチキンを食べる。

「どう? おいしいでしょ」

「うん。おいしいよ」

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