子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「いいんだ、洗い物くらいはするよ」

 なんだか申し訳ない気もしたが、そのままお願いして私は冷蔵庫にしまったケーキの箱を取り出した。

 と、そのとき、また吐き気が込み上げた。

 慌てて流し台に箱を置きトイレに駆け込む。トイレとお風呂が一緒になったユニットバスでしゃがみこんだ。

 はぁ。

「円花、大丈夫か?」

 疾風さんの心配そうな声がした。

「うん。大丈夫」

 ちゃんと話さないといけないかな。赤ちゃんのこと……。

 結婚はさておき、とりあえず妊娠の話は告げないと。

 疾風さんは父親なんだもんね。

 父親がいるのに、お父さんと一度も呼べないのは、この子がかわいそうだ。

 私ひとりで決めていい問題じゃないんだよね。

 この子の気持ちと、疾風さんの気持ちも考えないといけない。



 吐き気が落ち着いてから、ドアを開けると。

「円花、もしかして?」

 右手をおなかにあてて、勇気をだした。

「うん。私ね、妊娠したの」

 大きく目を見開いた疾風さんは、私のおなかを見る。

「まだね、六週目だから、一センチもなくて」

 唐突に抱きしめられた。

「疾風さん?」

「そうか。できたか子ども――。俺たちの」

 すりすりと頭に頬ずりされる。


 喜んでくれるの?

「うれしいよ、円花」

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